「Linguistics and the Mind」  ノアのカナダ留学日記 - その44

「Linguistics and the Mind」 

ノアのカナダ留学日記 - その44

 

 日本では学期始めの4月ですが、カナダでは4月は学期終わり兼年度終わりです。

 ということで、前回に引き続き今回と次回は恒例の授業総括になります。

 

Linguistics and the Mind

 上手い日本語訳を付けるのが難しいタイトルなのですが、「言語学と心理」といったところでしょうか。神経言語学とちょっと似たテーマの授業で、前半は主に脳と言語使用との関係について、後半は言語は引き続きテーマとして扱ったのですが、より心理学っぽい内容でした。

 期末試験がない代わりに期末レポートがあり、教科書2冊を参考文献として、自分の興味のある言語事象について書くというものでした。

 そこで、私が選んだテーマは外国語学習の難しさと、それを踏まえて学習者をどう支援できるかについて。後半使った教科書で現在の一般的な教室学習で改善すべき点、「心の傷」を感じている場合に生じる学習の難しさについて触れられていたので、教室学習、語学留学による英語学習の難しさは何かとそれらをどう解消できるかについて書きました。

 

教室学習の改善点

 教室学習の改善点は一言でまとめると「コミュニケーションの機会不足」と言えそうです。以下教科書で述べられていた内容になりますが、日本で一般的なひたすら先生の話を聞く授業を受けている最中には、脳の外側前頭前部、頭頂部、内側側頭部と海馬が使われているそうです。

 ・・・と言うととても難しく聞こえますが、要は記憶に関わっている部分。これらの場所が記憶に関わる唯一の部分かと思いきや、実は人とコミュニケーションを取ったり、相手がどんなことを感じているか考えているときに使われる脳の部分も記憶と関係している、むしろ前者の記憶システムより高性能な記憶システムの可能性があるとのこと。

 ですが、このシステム、先生の話を聞くだけの座学の授業を受けているときにはシャットダウンされてしまっているそうです。もっと優れた記憶システムを持っているのに、そちらを全く使っていない可能性があるということです。

 そこで教科書の筆者が提案していたのが、生徒たちに他の生徒に勉強したことを教えさせるということ。

 英語の授業中に誰かとコミュニケーションを取るといったら、英語で会話をするというのが一番よさそうですが、生徒としても、先生としても、なかなか難しいのが現実ですよね・・・。

 でも、生徒に教える役をやらせるというのならそれほど無理なく授業に取り入れられそうな気がします。これでも生徒は「こういう風に説明したらわかりやすいかな?」と自分の発言に対して相手がどう感じるかを考えるため、コミュニケーション中に働く高性能な記憶システムを使うことができるそうですよ!

 

留学の難しさとその解消法

 教科書の「心の傷」についてのチャプターを読んでいて、留学を難しくしているのは、後となってはいい経験で、自分自身の成長につながることでもあるのですが、「心の傷を負ってしまうこと」なのかなと思いました。

 「心の傷」と言うと大げさですが、つまりは家族や友達と離れて暮らしたり、日本の食べ物やTV番組が恋しくなったり、言葉が通じないことにで自信喪失に陥ったり・・・といったカルチャーショックみたいなものです。

 こういう「心の傷」は脳の同じ部分で、身体の傷と同じように、「痛み」として感じられているそうです。で、この傷がすぐに治れば問題はないのですが、慢性化すると思考力や記憶力など、認知機能の低下を引き起こしてしまうそう。

 もちろん留学も月日が経つと楽しい部分の方が大きくなってきますが、やっぱりどこかで家族や日本の友達を恋しく思う気持ち、あるいは「留学してからこんなに経つのにこんな簡単なことも言えない・・・」といった気持ちが完全に消えることはないように思います。そういう意味では留学生は留学中を通して、常に「心に傷を負った状態」にあり、余計に思ったように英語力が伸びない、そのせいでまたさらに傷が深くなってしまうという負のサイクルがありそうです。

 それで、教科書で紹介されていた実験結果をもとに改善策を考えてみると、とりあえず後々経験する心の傷に備えるしかなさそうです。

 そのためには、同じ不安を抱えて留学した留学の先輩の成功談を聞くこと、出発前に行く国や大学、寮、大学周辺の状況をよく下調べし、「この場所について、結構知ってるよ!」という気持ちで出発することが効果的そうでした。

 「なんだ、そんなのみんなやることじゃん!」と思われそうですが、それしかなさそうです(笑)

 

 なんだかこれから留学に行く人を落胆させてしまいそうな終わり方になってしまいましたが、最後に朗報です。自分が置かれた社会、コミュニティに同化したい!という思いが強いと、そのために学んだことの吸収力が各段にアップするそうです。これってまさに留学の状況ですよね!

連載 『ノアのカナダ留学日記